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私は犬


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私は犬。
名乗るほどの犬ではない。そこいらにいるただのワン公だ。

小さい頃に里子に出され、今の家に貰われてきた。

他にも兄弟がいたが、もうみんな生きてはいないと思う。


奔放で縛られるのが嫌な性格の私は、飼い主さんにたくさん迷惑をかけた。

そこいらにおしっこを掛けたり、他の家の犬に吠え掛かったり。

その度に飼い主さんに怒られ、時には手を出されたりもした。

だがその後には飼い主さんは必ず優しく撫でてくれた。

私はそんな飼い主さんの手と匂いが大好きだった。


飼い主さんが泣いていた日もあった。そんな時は、私は黙って飼い主さんの傍に寄り添った。

犬である私に出来ることはそれぐらいしかない。

飼い主さんが遠くに連れて行ってくれたこともあった。そんな時は、私は思いっきり飼い主さんと遊んだ。

犬である私はそうやって喜びを表現した。


長い年月が経って、私はもう目も耳もだいぶ悪くなった。

なにか病気にも掛かっているらしい。立つのもつらくなってきた。


また飼い主さんが泣いている。

また何か悲しいことやつらいことがあったのだろうか?

私はふらつく足で立ち上がり、飼い主さんの傍に寄り添おうとした。

飼い主さんは、立ち上がる私に、震える声で「ダメ!」と声を荒げた。

また私の行動が飼い主さんを怒らせてしまったようだ。

だがその後は、必ず飼い主さんは私を優しく撫でてくれる。

私は目を閉じた。もう目は見えていなかった。だが飼い主さんの手と匂いは感じる。

私は幸せだった。
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